2012年09月07日

本事件刑事裁判判決A

先に引き続き、刑事裁判の第二審判決を掲載します。

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<刑事裁判 第二審判決(大阪高裁)>

威力業務妨害,侮辱被告事件
大阪高等裁判所平成23年(う)第788号
平成23年10月28日第4刑事部判決

       判   決

無職 A 昭和44年○○月○○日生
 上記の者に対する威力業務妨害,侮辱被告事件について,平成23年4月21日京都地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官谷口照夫出席の上審理し,次のとおり判決する。


       主   文

本件控訴を棄却する。


       理   由

 本件控訴の趣意は,弁護人徳永信一作成の控訴趣意書及び同補充書(ただし第2の3ないし5の部分)に各記載のとおりであるから,これらを引用する。
1 控訴趣意中,事実誤認の主張について
 論旨は,被告人が,平成21年12月4日(以下日付は全て平成21年を指し,記載を省略する。),学校法人B学園(以下「本件学校法人」という。)が設置する京都C学校(以下「本件学校」という。)に向けてした発言は,「都市公園法,京都市公園条例に違反して50年あまり,Dはサッカーゴール,朝礼台,スピーカーなどなどのものを不法に設置している。こんなことは許すことできない。」「早く門を開けろ。」「戦後,焼け野原になった日本人につけ込んで,民族学校,民族教育闘争ですか。こういった形で,至る所で土地の収奪が行われている。」「日本から出て行け。」というもののみで,これらだけでは侮辱罪は成立せず,また,原判示第1の事実(以下「判示事実」という。)にあるその他の発言について,原審相被告人E(以下「E」という。),同F(以下「F」という。)及び同G(以下「G」という。)らと共謀してもいないから,被告人は無罪であるのに,判示事実にある一連の発言を共謀に基づくものと認めて被告人を有罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認がある,というのである。
 そこで,記録を調査して検討すると,原判決がその挙示する証拠により,被告人とE,F及びGとの間に判示事実の一連の発言についての共謀の存在を認めて被告人を侮辱罪について有罪としたのは正当である。
 以下,所論に鑑み,補足して説明する。
(1)所論は,12月4日の本件学校前での抗議活動(以下「本件活動」という。)の参加者がいかなる内容の発言をするかについて,被告人がEらとの間で事前に計画をしたり,意思の一致を見たり,相互に了解をした事実はないから,判示事実にある,「朝鮮ヤクザ」「ろくでなしのD」「お前らがな,日本人ぶち殺してここの土地奪ったんやないか。」「約束というものは人間同士がするものなんですよ。人間と朝鮮人では約束は成立しません。」などといった,被告人以外の本件活動の参加者がした,侮辱罪に問擬され得る発言内容について,これを事前に知らなかった被告人が刑事責任を問われるいわれはなく,また,上記した被告人自身の発言内容は侮辱罪が成立する程度のものではない,と主張する。
(2)この点,関係証拠(被告人の供述を除く。)によれば,以下の事実が合理的な疑いをいれる余地なく認められる。
ア 本件活動に向けての勧進橋公園(以下「本件公園」という。)の現状の下見等の準備活動や,活動日時の指定,当日の段取りなどを中心的に行ったのはEであり,また,同人がこれらの手伝いを依頼したり,詳細について相談を持ちかけた相手はFであった。
イ Eは,本件公園の下見等の準備活動の結果,それまで行っていた街宣という手段による抗議活動だけでなく,本件公園から朝礼台を運び出す等の実力行使をすることを考えた。Eは,11月20日から12月2日の間,大阪府及び京都府下で合計6回の街宣活動を行い,被告人,F及びGは上記活動の全てに参加していたが,11月21日にH京都本部前で行った街宣活動の際,「Dの前にあるJ公園という公園には,Dが,無断でサッカーのゴールポスト,朝礼台を置いていて,スピーカーで校内放送まで設置してるんですよ。」「12月の何日か言わへんけど,徹底的に糾弾して,ゴールポストをDに放り込む。」等と本件活動をにおわす街宣をし,これ以降は,街宣活動や活動後の懇親会の際に、被告人らと本件活動についての意思疎通を図っていた(ただし,Eが被告人らに対して言った内容の詳細は証拠上明らかでない。)。
ウ Eは,事前に警察に通報されたり,あるいは警備体制を敷かれたりして本件活動が失敗することを避けつつも,頻繁に街宣活動に参加していた者の本件活動への参加を促すため,閲覧制限の掛けられたミクシー内のFの日記上で,12月1日,Fにおいて,日時,場所のほか抗議対象がDによる公園の無断使用であるとの記載をした後,同月3日午後11時53分ころ,Eにおいて,当日の段取りについて,「〔1〕珍しく紳士的にDを訪問し,「公園に設置されている学校の私物を撤去してあげるので門を開けてください」と下手に出る」「〔2〕★拒否された場合→多重人格者(←これ大事)のごとく変貌し,狂いだしマイク街宣を始める。」「〔3〕まずは重量が軽い朝礼台を学校の前まで持って行き,「門を開けろ!」と大合唱する。」などと記載してその概要を明らかにしたが,被告人及びGは,本件当時ミクシーに招待されておらず,上記記載を閲覧した可能性はない。 
 Eは,本件当日,K駅で落ち合った共犯者である本件活動の参加者3名に対し,移動中の車内で上記同様の段取りの概要を説明する等したが,被告人,F及びGらは別途本件学校前に直行していた。Eは,上記段取り通り,まず本件学校に向け,拡声器を用いずに,朝礼台やサッカーゴールを運び込むので門扉を開けるよう申し向けたところ,Gが,上記段取りと異なり,「こら,犯罪朝鮮人。なめたマネさらしやがって。」と言い出したことに驚きながらも,自身の予定に従って行動を続け,本件学校がEらの要請を拒否した体裁が整ったとの考えに至ると拡声器による街宣活動を開始した。
エ Eらは,本件学校関係者を威圧するほか,本件活動を本件学校の近隣住民にアピールするとの目的で拡声器を用いた街宣活動を行い,被告人は,Eが拡声器で街宣し始めた当初はこれを持ち,その後は,本件学校の門扉の前で腕を組んで仁王立ちしたり,あるいは,Eの声に併せて声をあげ,朝礼台を運ぶ等した。
オ Eが普段行っていた街宣活動の発言内容には,「朝鮮ヤクザ」といった朝鮮人を侮辱する言葉や,「朝鮮人は,戦後,日本人をレイプし虐殺し,日本の土地を奪って,その場所に現在もパチンコ屋やDが建っている。」といった朝鮮人,Hを非難する言葉が含まれたが,街宣活動に参加し続けていた被告人らは,Eのする上記文言での街宣活動について日頃から理解を示していた。
(3)上記事実を前提に検討すると,被告人は,本件活動に際して本件学校に直行するなど,本件活動の開催の日時・場所のほか,街宣活動の対象が本件学校による本件公園の不法占拠とされていることを知った上で本件活動に参加したことが認められるものの,他方,段取りが告知されたミクシーに招待された事実がなく,また,同様であったGの行動が,本件活動開始直後の時点でEの立てた段取りに反していたことからすると,被告人が,Eらとの間で,本件活動について事前に詳細な打ち合わせをしたり,段取りの告知を受けたりしていなかったことが推認される。しかしながら,被告人は,本件活動前からEと街宣活動を共に行い,H京都本部前での街宣時には,朝礼台等に触れた街宣活動をしてもいたことから,本件活動に参加する前から,Eが日常の街宣で使用している,朝鮮ヤクザなどといった言葉が拡声器を介して発言されることは勿論,朝礼台を本件学校に運ぶといった実力行使に至ることを認識した上で本件活動に参加したと強く推認され,事実,被告人も,検察官調書(原審検乙18,以下原審の証拠である旨の記載は省略する。)でその旨を認めている。また,Eが本件活動時に拡声器を用いて大音量で街宣をした目的は,判示事実記載の文言を本件学校関係者だけでなく,周辺住民に聞かせるためでもあったのであるから,門扉の前で仁王立ちしたり,実際にEの発言に従って朝礼台等を移動させる等していた被告人が拡声器を介してされた判示事実の発言を聞き漏らしたとは考えられないのであって,EやGの拡声器での発言内容に行き過ぎた発言はないとする被告人の検察官調書(乙18)の内容に照らすと(なお,被告人は,自身の検察官調書(乙16ないし乙19)について,原審公判において,担当検事の被告人の取調べ時の態度は紳士的なもので,内容を含めて特に不服などなく,ただ,乙17において通称Lの関与について述べた点だけ若干ニュアンスが異なる程度で,ほかには不満はないとしているのであるから,信用性について疑義のないものであることが明らかである。),本件活動は,被告人が参加前から考えていた範囲で行われたものと優に認められる(なお,所論は,Eらの発言の一部について被告人が現場で聞いていなかったと主張するが,上記のとおり被告人が聞き漏らしたことはおよそ考えられないし,仮にそうであったとしても,所論によれば,被告人は上記Lが作成した,本件活動の映像によって本件活動時におけるEらの発言全てを確認したというのであるから,上記検察官調書(乙18)において本件活動の発言内容に問題はないと感じたとしている点は,聞き漏らした点も含めて本件活動内容が被告人の想定した範囲内のものであったことを認めたものといえるのであって,主張は失当である。)。
 事実誤認をいう論旨は理由がない。
2 控訴趣意中,理由不備の主張について
 論旨は,〔1〕侮辱罪及び威力業務妨害罪について正当行為や正当防衛として違法性が阻却されるとの原審弁護人の主張にもかかわらず,原判決は,行為態様について拡声器による侮辱的な言辞による怒号や,引き取りの執拗な要求といった点を許される余地のない態様のものであると説示するだけで,被告人らの行為の目的の正当性について何ら判断を示しておらず,〔2〕侮辱罪の認定に当たっては一括して「侮辱的な言辞」と説示するだけで,個別の言論について何ら評価を示さず,〔3〕侮辱罪についても刑法230条の2の適用があり,被告人の言動はこれに該当し,また,公正な論評にも該当するのに,原判決はこれらの点を全く検討していないのであって,原判決には理由不備の違法がある,というのである。
 そこで案ずるに,〔1〕については,原判決は,違法性阻却事由の存否の判断において,手段の相当性という,正当行為や正当防衛の存否の判断に共通する要素について,これを認める余地はない旨認定説示していることに照らすと,目的などその余の要素について検討するまでもなく,違法性は阻却されないとの結論に至ったと見ることができるから,理由が具備されていることは明らかである。〔2〕については,原判決は,判示事実に列挙された発言内容をもって侮辱に当たるとの判断を示し,結論を導いているから,理由の説示には欠けるところなどない。〔3〕については,原審弁護人が侮辱罪を直接の対象としていない刑法230条の2の類推適用の解釈等を主張していないのであるから,原判決がこの点の説示をしなかったことは理由不備に当たらない。
 理由不備をいう論旨は理由がない。
 なお,仮に上記各主張が事実誤認をいう論旨であったと善解しても,〔1〕については,原判決説示のとおり,その行為態様は抗議活動として許容される範囲を大きく逸脱している上,関係証拠によれば,被告人らが問題視した本件公園の占有には急迫性はないのであるから,正当防衛等の違法性阻却事由(過剰防衛等含む。)の成立の余地などないし,〔2〕については,事実の解釈の問題であって,原判決の説示に特に誤りなどなく,〔3〕については,刑法230条の2は公然と事実を摘示することを要件とする名誉毀損罪の場合に真実性立証による免責を定めたもので,それを要件としない事実摘示のない侮辱罪の場合に適用があるとは解し得ず,主張の前提を欠いているのであるから,いずれも採用できない。
3 控訴趣意中,法令適用の誤りの主張について
 論旨は,〔1〕政治的意見を表明する言論に対して侮辱罪という極めて曖昧な外縁の刑罰法規を適用することは,表現の自由に対する萎縮効果を生み,その存立を危うくするから,適用することが違憲・違法というべきである,〔2〕侮辱罪の対象は,自然人又は法人に限られるのであって,法人格のない本件学校は被害者たりえないし,本件学校法人が被害者である以上は,被害者とする必要性もなく,本件学校に対する侮辱罪も成立したとするのは法文の解釈を誤っている,〔3〕「約束というものは人間同士がするものなんですよ。人間と朝鮮人では約束は成立しません」といった言論は,Dに対する誹謗ではなく,朝鮮人という集団を誹謗するものであるところ,集団に対する誹謗ないし侮辱は侮辱罪の対象とはならないから,法文の解釈を誤っているとして,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかし,〔1〕については,憲法21条1項に定める表現の自由に当たる行為であっても無制限に許容されるものではなく,公共の福祉や他の人権との抵触による合理的な制限を受けるものであるところ,判示事実にあるような内容を,平日の昼間の時間帯に学校に向けて拡声器を用いて叫ぶことはおよそ許容されるような行為ではないのであって,本件について侮辱罪を適用することが憲法違反となるとはいえない。
〔2〕については,侮辱罪の保護法益は社会的名誉と解されるところ,これは,自然人に特有のものではなく,自然人の集団にも,その集団の性格によっては個人と別に帰属するものであるところ(なお,集団が名誉の帰属的主体たり得るかはその社会的実態から判断すべきであって,法人格の存否が決定的な要素に当たるとは解されない。),学校については,長年の教育,文化,芸術活動を通じて社会から一定の評価を受け,このような活動,評価に対し,現に在校する生徒,教職員のみならず,卒業生等も強い関心を持つものであるから,侮辱罪の保護法益たる名誉の帰属主体となる集団に当たるというべきであるし,また,複数の学校を運営する学校法人や公共団体等については,特に法人格を付与され,独自に社会経済活動を営み,所属する個々の学校活動はその一部を構成するに過ぎないのであるから,学校法人と学校に名誉が個別に帰属し得る場合があるというべきで,本件学校とこれを含む複数の学校を運営している本件学校法人とが同時に侮辱罪の被害者となることは法益侵害の二重評価となるものではない。
〔3〕については,本件の侮辱行為は一連のものとして解すべきところ,本件学校の前で,本件学校や運営主体である本件学校法人のありようについてるる批判する中での発言であるから,特に朝鮮人との範疇について発言したと解されず,所論は前提を欠く。
 法令適用の誤りをいう論旨は理由がない。
 なお,〔2〕で説示したとおり,判示事実における侮辱罪の被害者は本件学校及び本件学校法人の2名で,そのうち本件学校がさらに威力業務妨害罪の被害者なのであるから,法令の適用においては,本件学校に対する威力業務妨害罪のほか,侮辱罪について,本件学校及び本件学校法人それぞれに刑法60条,231条を適用した上で,科刑上一罪の処理の際に,同法54条1項前段,10条を適用し,3つの罪のうち最も重い威力業務妨害罪の刑で処断する,とすべきところ,原判決は,(法令の適用)の項にあるように,侮辱罪について1個の法令の適用しかしていないから,罰条の適用及び科刑上一罪の処理について法令の適用に誤りがあるといわざるを得ないが,他方,上記誤りによって,科刑上一罪の処理には変わりがなく,処断刑の範囲には全く影響を及ぼさないのであるから,上記法令の適用の誤りが判決に影響を及ぼすものではない。
4 控訴趣意中,量刑不当の主張について
 論旨は,被告人を懲役1年,刑執行猶予4年間に処した原判決の量刑が重過ぎて不当である,というのである。
 そこで,記録を調査し,当審における事実取調べの結果を併せて検討すると,本件は,被告人が,Eらと共謀の上,平成21年12月,本件学校前の路上などにおいて,本件学校やその運営主体である本件学校法人に対して拡声器を用いて誹謗中傷する発言を繰り返して本件学校や本件学校法人を侮辱し,さらに,門扉に朝礼台を打ち当てる等し,本件学校の業務を妨害した,という事案である。
 犯行態様は,本件学校に児童らが多数いる状態であることを認識した上で,多数の大人が本件学校前に集まり,拡声器を用いて大音量で侮辱的発言を繰り返すほか,本件公園から朝礼台を引き出して門扉に打ち当てたり,本件公園内のサッカーゴールを引き倒す等して執拗にこれらの引き取りを迫る等し,いたずらに喧噪を生じさせたものであって,悪質なものといえるし,現実の業務が妨害されたほか,本件学校に居合わせた子どもや教職員等が上記行為によって抱いた恐怖や屈辱感にも大きいものがあるといえ,被害者から強い被害感情が示されているのも当然である。
 被告人について見ると,本件犯行を主導したのはEであるが,被告人の現場での実行行為への関わり方は積極的なものであって,本件犯行で果たした役割は決して小さくない。また,被告人は,原審の公判廷において,反省をしている旨述べてはいるものの,未だ本件犯行の正当性を主張し続けてもいるのであって,上記反省を真摯なものと評価することはできない。
 所論は,〔1〕本件学校が本件公園を不法占拠していたことは,学校長が都市公園法違反の犯罪事実により罰金刑を受けたことから明らかで,本件犯行がこのような被害者側の違法行為が原因で生じたとの事情があり,〔2〕被告人らの言動がエスカレートしたのは,本件学校側の職員等の挑発的,けんか的言論が原因であったのに,原判決は,これら有利に斟酌される点に量刑上の考慮を全くしていないから,原判決の量刑が不当なものであることは明らかである,と主張する。
 しかし,〔1〕については,本件学校側の本件公園に係る違法,不当行為について問題があったというのであれば,法に則った行為をすれば済むし,また,被告人に認識がなかったにせよ,首謀者であるEらは,本件公園の問題が本件学校と京都市との間で話合いの途上にあり,年明けには一定の結論が出ることは承知していたものでもあるから,所論指摘の点をもって,被告人の量刑に影響を及ぼすような被害者側の落ち度であるとまではいえない。〔2〕については,本件学校関係者等の反応は,被告人らが大音量で誹謗中傷をしたことが直接の発端であるから,何ら被告人の責任を軽減させるようなものではない。
 そうすると,被告人に前科がないこと,捜査段階から相応の期間の身柄拘束を受けたこと,自業自得とはいえ職を解雇されたことといった,被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても,被告人を懲役1年,刑執行猶予4年間とした原判決の量刑が重過ぎて不当であるとはいえない。
 量刑不当をいう論旨は理由がない。
 よって,刑訴法396条により本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。
平成23年10月28日
大阪高等裁判所第4刑事部
裁判官 杉田宗久 裁判官 竹尾信道
裁判長裁判官古川博は退官のため署名押印することができない。
裁判官 杉田宗久

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posted by こるむ at 00:00| 裁判資料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

本事件刑事裁判判決@

第14回口頭弁論(9月26日)が迫ってまいりました。

本訴訟の核心の一つである被告らの組織的活動の実態が、
今後の尋問での被告ら本人や原告当事者の証言から、究明されることになります。
それに先立ち、この場にても(インターネット上の他所で既に公開されています)、
司法による処断が下されている本事件の刑事裁判の判決を、あらためて掲載いたします。

刑事裁判にて認定され処罰対象となった事実に対して、本民事裁判で被告らは自らいったい
どのような主張をするのか。また、刑事裁判からさらに踏み込んで明らかにされる事件の実態・
本質とは何か。こういったことを念頭に、判決を掲載したいと思います。

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<刑事事件 第一審判決(京都地裁)>

威力業務妨害,侮辱,器物損壊,建造物侵入被告事件
京都地方裁判所平成22年(わ)第1257号,平成22年(わ)第1641号
平成23年4月21日第2刑事部判決

       判   決

被告人
氏名 A
年齢 昭和43年○○月○○日生
職業 マンション管理業
弁護人 渡辺★修
被告人
氏名 B
年齢 昭和39年○○月○○日生
職業 飲食店経営
弁護人 鈴木一郎
被告人
氏名 C
年齢 昭和46年○○月○○日生
職業 電気工事業
弁護人 間光洋
被告人
氏名 D
年齢 昭和44年○○月○○日生
職業 無職
弁護人 徳永信一
検察官 上野正晴,梅本大介


       主   文

被告人Aを懲役2年に,同B及び同Cを懲役1年6月に,同Dを懲役1年に処する。
被告人ら4名に対し,この裁判が確定した日から4年間,それぞれその刑の執行を猶予する。


       理   由

(犯罪事実)
第1 被告人4名は,Eらと共謀の上,平成21年12月4日午後1時ころから約46分間にわたって,学校法人a学園が設置する京都市<以下略>b学校南側路上及び同区<以下略>α橋公園において,被告人ら11名が集合し,日本国旗や「在日特権を許さない市民の会」及び「主権回復を目指す会」などと書かれた各のぼり旗を掲げ,同校校長FことGらに向かってこもごも怒声を張り上げ,拡声器を用いるなどして,「日本人を拉致したc傘下,朝鮮学校,こんなもんは学校でない。」「都市公園法,京都市公園条例に違反して50年あまり,朝鮮学校はサッカーゴール,朝礼台,スピーカーなどなどなどのものを不法に設置している。こんなことは許すことできない。」「北朝鮮のスパイ養成機関,朝鮮学校を日本から叩き出せ。」「門を開けてくれて,設置したもんを運び届けたら我々は帰るんだよ。そもそもこの学校の土地も不法占拠なんですよ。」「戦争中,男手がいないところ,女の人レイプして虐殺して奪ったのがこの土地。」「ろくでなしの朝鮮学校を日本から叩き出せ。なめとったらあかんぞ。叩き出せ。」「わしらはね,今までの団体のように甘くないぞ。」「早く門を開けろ。」「戦後。焼け野原になった日本人につけ込んで,民族学校,民族教育闘争ですか。こういった形で,至る所で土地の収奪が行われている。」「日本から出て行け。何が子供じゃ,こんなもん,お前,スパイの子供やないか。」「朝鮮ヤクザ。」「不法占拠したとこやないかここは。」「お前らがな,日本人ぶち殺してここの土地奪ったんやないか。」「約束というものは人間同士がするものなんですよ。人間と朝鮮人では約束は成立しません。」などと怒号し、同公園内に置かれていた朝礼台を校門前に移動させて門扉に打ち当て,同公園内に置かれていたサッカーゴールを倒すなどして,これらの引き取りを執拗に要求して喧噪を生じさせ,もって威力を用いて同校の業務を妨害するとともに,公然と同校及び前記学校法人a学園を侮辱し
第2 被告人Cは,同日午後1時過ぎころ,前記α橋公園内において,前記学校法人a学園が所有管理するスピーカー及びコントロールパネルをつなぐ配線コード(損害額約1540円相当)をニッパーで切断して損壊し
第3 被告人A,同B及び同Cは,H,J及びKらと共謀の上,あしなが育英会等に寄付するとして集められた募金の中からd組合が学校法人e学校に支援金を渡したとして糾弾するなどして同組合の正常な業務を妨害する目的で,平成22年4月14日午後1時15分ころ,同組合委員長L看守に係る徳島市<以下略>f会館2階同組合事務所内に,「gの正体,反日教育で日本の子供たちから自尊心を奪い,異常な性教育で日本の子供たちを蝕む変態集団,それがg」などと記した横断幕,日章旗,拡声器等を携帯して,「詐欺罪。」などと怒号しながら侵入した上,そのころから同日午後1時28分ころまでの間,約13分間にわたり,同事務所において,同組合の業務に係る事務をしていた同組合書記長M(当時58歳)及び同組合書記N(当時44歳)の2名を取り囲み,同人らに対し,前記横断幕,日章旗を掲げながら,拡声器を用いるなどして,「詐欺罪じゃ。」「朝鮮の犬。」「売国奴読め,売国奴。」「国賊。」「かわいそうな子供助けよう言うて金集めてね,朝鮮に150万送っとんねん。」「募金詐欺,募金詐欺じゃ,こら。」「非国民。」「死刑や,死刑。」「腹切れ,お前,こら。」「腹切れ,国賊。」などと怒号し,「人と話をするときくらいは電話は置き。」「置けや。」などと言いながら前記Mの両腕や手首をつかむなどして同人が110番通報中であった電話の受話器を取上げて同通話を切った上,同人の右肩を突き,「cとgの癒着,許さないぞ。」「政治活動をするgを日本から叩き出せ。」などとシュプレヒコールするなどした上,机上の書類等を放り投げ,拡声器でサイレン音を吹鳴させるなどし,前記事務所内を喧噪状態に陥れて同組合の正常な業務を不能ならしめ,もって同事務所に正当な理由がないのに侵入した上,威力を用いて同組合の業務を妨害した。
(証拠の標目)《略》
(弁護人の主張に対する判断)
第1 憲法違反の主張について
 弁護人らは,侮辱罪の規定は明確性の原則に反して違憲であり,仮にそうでないとしてもこれを政治的言動に対して適用することは違憲である旨主張する。しかし,侮辱罪の構成要件は明確であるから,これが憲法に違反するものでないことは明らかであり,政治的目的を有することの一事をもって公然と人を侮辱する行為がすべて許されることになるわけではないから,弁護人らの前記主張はいずれも採用できない。 
第2 犯罪の成否について
1 判示第1の行為について,弁護人らは,相当な目的による相当な態様の抗議活動であり,法益侵害の程度が低いものであるから,正当な政治的表現行為として違法性がないなどと主張する。しかし,その行為は,b学校の校門前において,被告人ら11名が集合し,約46分間にわたって拡声器を使うなどして被害者らに対する侮蔑的な言辞を大音量で怒号した上,被害者らの所有物を移動させてその引取りを執拗に要求するなどの実力行使に及んで喧噪を生じさせたものであり,許容される余地のない態様のものである。なお,侮辱罪に関して,被告人Dの弁護人は,本件学校はその被害者となり得ないなどと主張するが,社会において統一的な意思の下に行動する団体である同学校の名誉は,その運営主体である学校法人の名誉とは別に保護に値するから,その主張には理由がなく,本件が侮辱罪を構成し,被告人Dがその責任を負うべきことは当然である。
 判示第2の行為について,被告人Cの弁護人は,政治的表現行為の一環である上,危険な状況を解消する必要性及び緊急性があった旨主張するが,本件器物損壊行為を正当な政治的表現とみる余地はなく,また,関係証拠によっても,配線コードの切断が公園利用者の危険除去のために緊急に必要であったことはうかがわれない。
 判示第3の行為について,弁護人らは,正当な政治的抗議であり,建造物への侵入はしていないし,業務妨害行為も存在せず,又は違法性がないなどと主張する。しかし,その行為は,狭隘な事務所に16名の者が押し入って職員2名を取り囲んだ上,約13分間にわたって拡声器を用いて大音量で怒号するなどし,被害者の腕や手首をつかんだり右肩を突き,机上の資料を放り投げたりサイレンを鳴らすなどしたものであって,許容される余地のない態様のものであり,このような態様による抗議への対処が組合業務の一環であるなどとは到底いうことはできず,事務所への立入りが承諾されたと考える余地はない。このことは,前記事務所が所在する建物の受付において立入りを制止されなかったこと等の弁護人らが主張する事情があっても変わるところはない。
2 以上のとおり,被告人らの判示各行為は,いずれも正当な政治的表現の限度を逸脱した違法なものであると認められ,そのことは臨場した警察官が制止措置を講じなかったといった事情を考慮しても変わるところはなく,故意や違法性の意識及び可罰的違法性の主張等の点も含め弁護人らの主張はいずれも採用できない。
(法令の適用)
罰条
 判示第1の行為(被告人4名) 刑法60条,234条,233条(威力業務妨害罪の点)
                刑法60条,231条(侮辱罪の点)
 判示第2の行為(被告人C) 刑法261条
 判示第3の行為(被告人P,同B,同C) 刑法60条,130条前段(建造物侵入罪の点)
                     刑法60条,234条,233条(威力業務妨害罪の点)
科刑上一罪の処理 判示第1につき刑法54条1項前段,10条(重い威力業務妨害罪の刑で処断。)
         判示第3につき刑法54条1項後段,10条(犯情の重い威力業務妨害罪の刑で処断。)
刑種の選択 いずれも懲役刑を選択
併合罪加重 刑法45条前段,47条本文,10条(被告人A及び同Bにつき犯情の重い,被告人Cにつき犯情の最も重い,判示第3の罪の刑に法定の加重。)
刑の執行猶予 いずれも刑法25条1項
(量刑の理由)
1 判示第1及び第2の犯行は,被告人らが,在日朝鮮人の特権廃止を目的に掲げる団体の活動として,同団体の構成員ら総勢11名で,のぼり旗を立てるなどして多数の威力を示し,多数の児童がいる朝鮮学校付近において,判示のとおり,拡声器を使って侮辱的言辞を繰り返し怒号し,サッカーゴールを倒したり朝礼台を動かして執拗に引取りを求めたりし,配線コードを切断するなど,強い威力を用いて周囲に喧噪を生じさせたものであり,その犯行態様は悪質である。これらの行為は,本件学校に多数の児童が在校していることを認識しながら行われたことが明らかであり,不穏当な行為というほかなく,それによって本件学校の授業が妨害された結果も重大である。判示第3の犯行は,狭隘な事務室に16人で侵入し,横断幕等を示すなどして多数の威力を示し,2名の女性職員に対し,判示のとおり,拡声器等を用いて大音量で一方的に罵詈雑言を浴びせた上,職員の手首や腕をつかんだり机上の資料を放り投げるなどの実力行使にまで及んだものであり,その態様は悪質である。それにより,被害者らの業務が現実に妨害されたのみならず,被害者がその間に抱いた恐怖心や屈辱感は大きいものとうかがわれ,その結果にも重いものがあり,被害者が強い被害感情を示しているのはもっともである。そうであるのに,被告人らは,公判廷でも本件各行為は正当であったと述べるなど反省が見られない。
2 被告人Aは,各犯行の計画を立案し,参加者を募った上で,判示第1及び第3の犯行においてリーダーとして共犯者らの行動を主導し,自ら拡声器を使った怒号を繰り返しており,首謀者としての責任は重い。被告人Bは,各犯行に計画段階から関与し,判示第1及び第3の犯行において積極的に怒号したほか,判示第3の犯行では被害者の腕をつかんだり肩を突くなどして重要な役割を果たしたものである。被告人Cは,各犯行に積極的に関与した上,判示第2の器物損壊行為をしたものであって,その役割は大きい。被告人Dは,判示第1の犯行において,自ら拡声器で侮辱文言を怒号し,朝礼台を運搬するなどしたものであり,その役割は小さくない。
3 他方,被告人4名にはいずれも見るべき前科がなく,公判請求を受けるのは初めてであること,被告人らはいずれも本件が違法とされればその活動手法を改める旨述べていることは,被告人らの刑事責任を軽くする事情である。
4 以上の諸情状を考慮し,被告人4名については,その責任に応じて主文の刑に処した上,今回はその執行を猶予することとする。
(求刑 被告人Aにつき懲役2年,同B及び同Cにつき懲役1年6月,同Dにつき懲役1年)
平成23年4月21日
京都地方裁判所第2刑事部
裁判長裁判官 笹野明義 裁判官 江見健一 裁判官 前田芳人

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