2012年09月08日

事件関連書籍のご紹介

本朝鮮学校襲撃事件に関連する書籍のご紹介です。

石埼学、遠藤比呂通編『沈黙する人権』(法律文化社、2012年5月)
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『人権の定義・語り自体が、人間を沈黙させる構造悪であることを指摘し、
根底にある苦しみによりそい、その正体に迫る。日本社会の差別の現状を批判的に分析。
人権〈論〉のその前に。(出版社ウェブサイト書籍紹介文抜粋)
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本書第7章「ヘイトクライムと人権――いまそこにある民族差別」(執筆・金尚均)と、
エピローグ「人権・その根源を問う」(執筆・遠藤比呂通)にて、在特会らによる京都
朝鮮第一初級学校襲撃事件について論じられています。

(書籍紹介ウェブサイトリンク)
http://www.hou-bun.com/cgi-bin/search/detail.cgi?c=ISBN978-4-589-03431-1
http://chosonsinbo.com/jp/2012/06/0604ib/
http://www.jicl.jp/now/ronbun/backnumber/20120611_01.html

このほか、
前田朗『ヘイトクライム―憎悪犯罪が日本を壊す』(三一書房労働組合、2010年)
http://union31.blog15.fc2.com/blog-entry-1.html)、
安田浩一『ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて』(講談社、2012年)
http://g2.kodansha.co.jp/279/280/15166/15167.html
といった、本事件を扱った、一般書店でも比較的容易に購入できる貴重な書籍と合わせ読まれることで、
排外主義・人種主義のレトリックに依存する剥き出しの差別言論・行為を、「表現の自由」「市民活動」と
いかにももっともらしく糊塗して表出することに駆られずにはいられない者たちの諸相が、読者に
も反省的に伝わることと思います。

posted by こるむ at 00:00| 裁判資料 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

関連事件判決 奈良・水平社博物館差別街宣事件


この間、在特会らによる徳島県教組書記局襲撃事件(2010年4月14日)、
そして奈良県の水平社博物館に対する差別街宣事件(2011年1月22日)では重要な動きがありました。

奈良の事件では、6月25日に奈良地裁にて、水平社博物館に対する名誉毀損の損害賠償150万円の
支払いを被告に命じる勝訴判決が下されました(被告控訴せず)。
この判決は、被告が差別街宣をインターネット動画サイトに投稿し、広く市民が視聴できる
状態においた点を重視しており、従来の名誉毀損事件にくらべて賠償額が非常に重いもので
あることから、京都での裁判所の判断にも大きな意義をもつと考えられます。

徳島の事件では、襲撃を行った在特会ら19名が名誉毀損の罪では不起訴となったことについて、
徳島検察審査会は約11ヶ月の審理を経て6月21日、「不起訴不当」の議決をしました。
この議決も、襲撃行為をインターネット上で動画配信し不特定多数の人々に閲覧させたことや、
犯行後も被害者に対する誹謗中傷を継続したことをとらえ、「被害者らが受けた精神的苦痛は大きく、
被害感情も峻烈である」との判断をしています。
また、現段階では19名は「起訴」とはなっておらず、公訴時効が来年3月に迫っているため、
検察への働きかけが必要でもあります。

以下では、奈良県の水平社博物館に対する差別街宣事件の判決文を掲載します。

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慰謝料請求事件
奈良地方裁判所平成23年(ワ)第686号
平成24年6月25日民事部判決
口頭弁論終結日 平成24年5月7日

       判   決

原告 公益財団法人A(変更前の名称 財団法人B)
同代表者代表理事 C
同訴訟代理人弁護士 古川雅朗 小城達 上羽徹 福本佳苗 小椋和彦 内橋裕和
被告 D


       主   文

1 被告は,原告に対し,150万円及びこれに対する平成23年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを20分し,その17を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
4 この判決は,1項に限り,仮執行することができる。


       事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
(1)被告は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成23年9月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)訴訟費用は,被告の負担とする。
(3)仮執行宣言
2 請求の趣旨に対する答弁
(1)原告の請求を棄却する。
(2)訴訟費用は,原告の負担とする。

第2 事案の概要
1 本訴請求
 本訴請求は,被告が,原告の開設する博物館の前で,原告の名誉を毀損する言動などをして,原告に慰謝料1000万円の損害を生じさせたと主張して,原告が被告に対し上記慰謝料及びこれに対する訴状送達の翌日から民法所定の利率による遅延損害金の支払を求めたものである。
2 判断の前提となる事実
 以下の事実は,争いのない事実,顕著な事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によって認めることができる事実である。
(1)原告及び水平社博物館
 原告は,部落問題及び水平社運動に関する調査研究を行うとともに,関係史料及び文化財を収集及び保存し,併せてこれらを一般に公開することにより,人権思想の普及と啓発に資することを目的として平成10年4月1日に設立許可を受けた財団法人Bが,平成24年4月1日,名称を変更して移行した公益財団法人である。
 財団法人Bは,平成10年5月,前記目的のため,奈良県御所市aに水平社歴史館を設立及び開館した。なお,水平社歴史館は,平成11年4月1日,水平社博物館に名称を変更した。(顕著な事実,甲第1,第11号証,弁論の全趣旨)
(2)被告
 被告は,「E」(以下「E」という。)の会員であり,執行役員,関西地区担当副会長兼大阪支部長を務めている。Eは,在日韓国人,朝鮮人の特別永住資格の廃止を主唱する団体である。(争いのない事実,弁論の全趣旨)
(3)水平社博物館の展示
 水平社博物館は,部落問題及び水平社運動等に関する常設展示をするとともに,テーマを設定して特別展示及び企画展等を開催している。
 水平社博物館は,平成22年12月10日から平成23年3月27日までの間,企画展として「コリアと日本―韓国併合から100年」と題する企画展示をなした。(争いのない事実,甲第2,第4,第6,第12号証)
(4)被告の言動
 被告は,平成23年1月22日午後1時過ぎから,水平社博物館前の道路上において,ハンドマイクを使用して,次のとおりの演説をした。そして,被告は,上演説の状況を自己の動画サイトに投稿し,広く市民が視聴できる状態においている。
「なぜここでこうやってマイクを持って叫んでるかといいますと,この目の前にある穢多博物館ですか,非人博物館ですか,水平社博物館ですか,なんかねえ,よく分からんこの博物館」「強制連行された女性の中には,慰安婦イコール性奴隷として軍隊に従属させられ,性的奉仕を強いられた人もいましたと,こういったことも書かれておりますねえ」「慰安婦イコール性奴隷と言っているんですよ,こいつらはバカタレ。文句あったら出てこい,穢多ども。慰安婦。性奴隷。これねえ,すごい人権侵害ですよ,これ。性風俗産業ね。自分が性風俗産業で働くのが大好きだと,これが天職だと,喜んで働いている女性に対して人権侵害なんですよ,これ」「この水平社博物館,ド穢多どもはですねえ,慰安婦イコール性奴隷だと,こういったこと言ってるんですよ。文句あったら出てこいよ,穢多ども。ね,ここなんですか,ド穢多の発祥の地,なんかそういう聖地らしいですね。」「穢多やら非人やらいうたら,大勢集まって糾弾集会やら昔やっとったん違うんですか。出てこい,穢多ども。何人か聞いとるやろ,穢多ども,ここは穢多しかいない,穢多の聖地やと聞いとるぞ。出てこい,穢多ども,おまえらなあ,ほんまに日本中でなめたマネさらしやがって」「ここでそういうことやったら,なんか大勢人間がね,集まってきて囲まれて,なんか大変なことになるということをね,ちょっと事前に聞いてね。あまり,こう,平穏に街宣ができるとはちょっと思ってなかったので,あまり何を言うか考えてこなかったんですけど」「いい加減出てきたらどうだ,穢多ども。ねえ,穢多,非人,非人。非人とは,人間じゃないと書くんですよ。おまえら人間なのかほんとうに」「穢多とは穢れが多いと書きます。穢れた,穢れた,卑しい連中、文句あったらねえ,いつでも来い。」(争いのない事実,甲第3号証,弁論の全趣旨)
3 争点
(1)被告の不法行為の成否
ア 原告
 被告は,原告に対し,穢多博物館,非人博物館と蔑称を投げ付けるとともに,その関係者らに対し公然と口頭及び拡声器を使用して「ドエッタども,出てこい。」などとの挑発的言動を意図的になした。これは,前代未聞の差別事件であり,穢れ多き人々,人間外の人々が邪な目的を持って原告を設立し,原告が邪な社会的活動を行っている,そして,そのような邪な目的の下で「コリアと日本―韓国併合から100年」の企画展示をなしていると主張して,公然と事実を摘示し,基本的人権を普及し,啓発を旨とする原告の名誉を著しく毀損する言動を被告が行ったものである。しかも,被告は,上記言動の一部始終を自己の動画サイトに投稿し,全国の人々に流布させるべく試みている。その発言内容とともにその伝達方法からして,被告の行為は原告に対する悪質極まりない差別行為というべきである。
イ 被告
 否認する。穢多及び非人は蔑称ではなく,これを述べた被告が不当な差別をしているものではない。また,被告は挑発的な言動をしたことはない。被告は,原告が「コリアと日本―韓国併合から100年」の展示企画において誤った歴史認識を展示していることから,これを指摘したものにすぎない。 
(2)原告に生じた損害の額
ア 原告
 原告は,平成10年5月1日水平社歴史館を開館して以来,部落差別の撤廃,人権思想及び基本的人権の普及及び啓発に尽力し,日本国内外から既に25万人を超える人々が水平社博物館を参観し,全国水平社発祥の地,日本の人権のふるさととして親しまれている。このような原告の名誉ある活動に対し,被告は,水平社博物館の前で,穢多博物館又は非人博物館などと蔑称を何回も投げ付けて,その名誉を著しく毀損し,あまつさえ,そのような差別行為をインターネット上で動画として全国に発信するなどの極めて重大な挑発行為を公然と仕掛けてきたものである。
 原告は,被告の上記言動により社会的及び精神的損害を被り,これに対する慰謝料は1000万円が相当である。
イ 被告
 知らない。

第3 当裁判所の判断
1 被告の不法行為の成否
 前記第2の2(4)で判示したとおり,被告は,原告が開設する水平社博物館前の道路上において,ハンドマイクを使用して,「穢多」及び「非人」などの文言を含む演説をし,上記演説の状況を自己の動画サイトに投稿し,広く市民が視聴できる状態においている。そして,上記文言が不当な差別用語であることは公知の事実であり,原告の設立目的及び活動状況,被告の言動の時期及び場所等に鑑みれば,被告の上記言動が原告に対する名誉毀損に当たると認めるのが相当である。
2 原告に生じた損害の額
 前記1で判示した被告の不法行為となる言動はその内容が原告の設立目的及び活動状況等を否定するものであり,しかも,その時期,場所及び方法等が原告に対する名誉毀損の程度を著しくしていることなどの事情に鑑みれば,被告の不法行為によって原告に生じた有形,無形の損害は相当大きなものであるといわざるを得ず,これに対する慰謝料は150万円が相当である。
第4 結論
 以上によれば,原告が被告に対し民法709条,710条に基づき損害1000万円及びこれに対する不法行為後の日である平成23年9月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める本訴請求は,損害150万円及びこれに対する平成23年9月11日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,これを認容し,その余は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条本文を,仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。
奈良地方裁判所民事部
裁判官 牧賢二

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